本格EV時代に向け、ドイツの各自動車会社が奮闘

2020年最初の投稿です。

独Focus誌が刺激的な見出しでリポートを出してきました。

「Die ersten großen Verlierer der Auto-Revolution stehen bereits fest」
直訳すると「(電気自動車等普及に向けた)自動車革命における敗者は、もうまもなくはっきりするだろう」

今日のドイツの出来事はドイツ自動車業界の最新事情について解説します。

現在の自動車業界の立ち位置

もう長いこと、ドイツの各都市ではディーゼル自家用車への規制をかけています。これは新型モデルの拡販に繋げることも可能なのですが、軽油の値段が安いことでディーゼル車を導入していた層には、新型ディーゼル車を強くアピールしたところで「次の改定規制はいつくるんだ」「買ったはいいが10年も乗れないんじゃ意味がないじゃないか」という実感のほうが強くなります。

また、ドイツは中古車市場も活発です。旧型ディーゼル車の需要は激減していて、利用した先に「下取り」という選択肢がなくなりつつあります。

というわけで現状の自動車に関しては、正直な所購買意欲が沸かないというのが、近年の消費者の実感です。

さてこの現状に対し、どうしょうらいを見据えて行動していくのか。Focus誌の分析とともに見据えていきましょう。

電気自動車の開発

2019年はドイツ大手自動車企業が本格的にEV開発・販売にかじを切った年でした。インパクトがあったのはメルセデス・ベンツのEQC SUVモデルとVWのID.3ですね。この2つのモデルが今後世界を賑わせていくことでしょう。

特にVWはID.3に関し、彼らのアイコンである「ビートル」、現在の世界のコンパクトカーの規準である「ゴルフ」につづく第3のスタンダードにしようと力を入れています。

リストラの嵐

そうは言っても、人口も減り、自家用車の購買意欲を刺激する要素も少なくなっている現在、自動車企業は大きすぎます。エンジンからモーターへ駆動部を換えるだけでも、部品数が10分の1となり部品メーカーに影響が出ることも指摘されています。

アウディは2025年までに従業員を9500名削減することを既に明言しています。ダイムラー・ベンツも3年で1万人の解雇を予定しています。

下請けの部品会社各社でも5000名から1万名の従業員削減が予定されています。

米テスラの進出

昨年の11月13日、ドイツ最高峰の自動車賞のひとつといわれる『ゴールデンステアリングホイール賞2019』表彰式に、テスラCEOのイーロン・マスク氏が登壇。テスラ・モデル3が、ミドルカー部門で大賞を受賞しました。

そしてその表彰の際、「ベルリンの近くにギガファクトリーを作る」と発表。テスラの欧州進出拠点はドイツということで、会場も大いに沸きました。

ということで2020年以降、今まで外からの脅威と捉えられていたテスラがドイツの中でもプレーヤーとして足場を固めてきます。VW、Mercedes、BMWのビッグ3にしてみれば、それこそ本気で対処しなければならない時期に差し掛かったと言えます。

製造業のドイツと情報産業のアメリカの再提携

とかく自動車産業に関しては仲の悪かったドイツとアメリカですが、自動車におけるIoTの分野においては、ドイツ自動車業界もアメリカのテック産業と連携しないとやっていけなくなってきました。

自動車とスマホの連携、自動車と自動車の連携に関しては大規模なデータのやり取りが生まれます。そのデータを処理するクラウドシステムに関しては米テック業界がやはり業界最先端。グーグル・アップル・マイクロソフトとは各社共同歩調をとっています。

全自動運転車両の可能性

テスラのオートパイロットがどんどん進化している昨今、全自動運転車の研究も急ピッチで行われています。

既にドイツ国内の数カ所では仏EasyMile社製の6人乗りバスを導入し、試験的に走らせています。今後、こうした自動運転バスの実験経路は増えていくでしょうし、車両も大型化していくことでしょう。現にGoogle参加のWaymoやBoschもコミュニティバスの領域には関心を示しています。こうした車両に対する投資も今後注目の的になってきます。

新たなプレーヤー

DriveNowなどのカーシェアリングサービスはドイツのほとんどの都市で提供されています。車を保有して毎月もしくは毎年、燃料代や保険代、税金を払うよりも、その時払いで一括してすべての代金を支払うスタイルが広まりつつあります。日常的に乗らないのであれば、たしかにお得なこのスタイル、今後もっと広がりを見せることでしょう。自動車メーカーにはカーシェアリング用途が前提のオプションの採用が求められるかも知れません。

また、ハンブルクでは乗り合いバスのMoiaが登場しています。こうした用途に使える、ラグジュアリーな大型バン(日本で言うところのミニバン)の登場が待たれます。日本のメーカーもこちらでミニバンを売ればいいのに、、と思いますがエンジン出力や耐久性など、こちらで求められる規準では作っていないので、そのままは持ってこれないのでしょう。しかし欧州向けに開発するメリットはあると考えます。

まとめ

今回は以下の独Focus誌の記事を参考にしました。

https://www.focus.de/finanzen/news/arbeitsmarkt/der-grosse-umbruch-die-ersten-grossen-verlierer-der-auto-revolution-stehen-bereits-fest_id_11508380.html

では、また次回。

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